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2004年4月11日 (日)

原色でNGOを見て (松尾 沢子)

 以前JICAの実務でNGOと関わっていたときは、一つ一つの団体と付き合うというより、本邦のNGOセクター全体を相手に新しい事業を立ち上げていたので、NGO内部事情や個々人の生の意見というものにはさほど触れる機会がなかった。

またロンドン大学でNGOマネジメントの修士課程を履修していたときも、NGO出身のクラスメイトと互いの経験を話し合ったが、お互いの現場を実際にみていないので、なんとなく分かったような気になって一年が過ぎてしまった感がある。

そんな私にとって今回バングラデシュNGOのBRACでインターンをするということを決めたとき、一番楽しみだったのはこの有名なNGOで実際に働いている人と出会えるということだった。実際に現場で働いているNGOスタッフと日常的に話をし、彼らがどんなことを考えながら暮らしかつBRACで働いているかを垣間見ることは、いわば白黒の無声映画を音声付カラー映像でみるような経験である。つまりそれまでは文献を通じて役者が何をしているのかは理解できても、実際の役者(BRACスタッフ)の声を聞き、彼らが立ち回るセット(バングラデシュ)をありのままの姿で見ることがなかったからだ。

バングラデシュでは初対面の人との会話は往々にして兄弟姉妹の数、既婚・未婚、出身地から始まる。私も昨年秋に当地にきてから数えられないくらいこのやり取りをして、今は聞かれる前から話してしまうこともある。最初はこのやり取りが苦痛だったが、ある時からこれはBRACスタッフなりその他NGO関係者のことを知るのに使えると気づき、逆にこちらから出身地や両親の仕事、兄弟姉妹の就職状況、NGOで働いていることに対する親戚内の意見などを根掘り葉掘り聞くようになった。

 きちんと集計はとっていないが、私がよく話をするBRAC歴10年以上の層の傾向として、教育関係に従事する両親を持つ人が多い、土地持ち、長男長女は少ない、夫婦共働きが多い(ダッカの本部の場合。地方事務所ではあまり聞かなかった)といったことがあげられる。

 兄弟皆NGO勤務というケースもあれば、金にならないNGO勤めをビジネスマンの兄弟に笑われている人もいる。総じてみな子供の教育に熱心で、自分自身も機会があれば留学したいので、とりあえず日本に行く方法を教えてくれと聞いてくる。多くのNGOスタッフと同じく職場では政治の話はしたがらず、昨今の政党政治の激化については諦観している模様。

 見聞きするにつれ、これらの個別の「色」の下にはBRACへの就職動機という下塗りの色があることも見えてきた。彼ら自身は貧困層の出身ではなく、自らの状況を変えるというよりも、バングラデシュ独立後の社会の発展に貢献したいという意欲を持ち、硬直した政府機関よりもBRACを選んだ人々のようだ。昔は修士を持っている人を採用する傾向が強かったことを反映して、海外留学は稀であってもみな高学歴で、個人間で程度の差はあれ、社会規範を守り、男女平等や環境配慮といった現代国際社会の常識を実践しようという気持ちがある人々の集まりのように見受けられる。

 他方、若い世代は違ったタイプの「色」を持っている。一つのキャリア形成の手段としてBRACへの就職を割り切っていて、実際数年後にやめていく。BRACがバングラデシュ社会から優良就職先として認知されていること、また海外の組織でも通用するネームバリューに魅かれて、開発関係に限らず国際的に働きたい彼らの多くは履歴書に「BRAC勤務経験あり」と書けることを喜んでいる。

 また世代を問わず、結局は自分の地域の開発に直接関わりたいとBRACを退職してNGOを立ち上げる人もいれば、BRACという大組織の中でしかれたレールの上を走るだけでは自己実現が難しいからと、地方の中規模NGOへ転職する人もいたりとBRACとの関わり方は十人十色である。

 どのようにこれらの違った色は作られるのか。BRACという組織のなかでこれらの色が油絵のように重ねて塗られることで、既存の体制を覆い隠す新しい構図が生まれるのか。こんな問いかけが関係者と話すにつれ、組織体としてのBRACの今後について生まれてきた。また、より広く諸外国のNGOで働く人々のもつ色と描かれる絵と、日本の場合との比較研究も、市民参加を推進するJICA職員として、また私個人の関心として、取り組んでみたいとも考え始めている。

筆者は休職中JICA職員。当コラムは発表者個人の見解であり、所属先の立場を述べたものではない。筆者プロフィール

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コメント

BRACへの就職動機についての記述を大変興味深く拝読しました。公の利益の実現を目指す志のある人達が、就職先としてどちらに惹かれて行くのか、ということは大事な問題だと思います。政治や政府機関は閉塞感があるということで、BRACのようなNGOを選ぶ人が多いという実感は、なるほどと思いました。政府や企業も含め、バングラデシュのより多くの組織で、このような人達が自己実現できるよう、側面から支援できればと思います。

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