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2004年6月20日 (日)

インドNGO訪問メモ~インテリ、中産階級、海外移住組(松尾沢子)

先月末までの8ヶ月間のバングラデシュ滞在中、隣は何をする人ぞと、南アジアの大国インドのNGOを訪ねた。まずは、広大な土地、India Shiningという政治スローガンそのままの活気ある街角と人々の自信に満ちた表情に圧倒された。農村部は行かなかったので断定はできないが、バングラデシュとの比較では数段近代化が進んでいる国で、NGOがどんな役割を果たしているのだろうと興味をそそられた。以下、特に印象に残った2団体の活動を通じて考えたことをご紹介させていただく。

I. SLIC (Socio-Legal Information Centre)
1.団体概要:1980年代後半から活動開始。適切な法の執行により、すべての人に平等に基本的人権と正義が実現されることを目指す法曹関係者の集団。社会的弱者(女性、子供、難民、その他差別に苦しむ人々など)からの要望にこたえるべく、法律相談、法律講座、難民申請・定住等にかかる諸手続き支援などの活動を実施。その際にはHuman Rights Law Network (HRLN)という全国規模の法曹関係活動家のネットワークを駆使して情報交換や共同事業を実施することもある。財政面は全面的にドナーに依存しており、たとえば難民関連の事業はUNHCRインド事務所からの委託となる。

2.考えたこと:法曹関係者としては廉価の報酬でありながら(時には無償で仕事を引き受けることもある)自らの仕事に誇りをもって取り組み、全国規模のネットワークを駆使しつつ、社会的弱者の立場から不正義、人権侵害に対応しようとする姿勢は、NGO活動の原点といえる。デリー事務所訪問時に垣間見た離婚係争中の妻からの依頼を受け、夫の海外逃避阻止のために、渡航先大使館や裁判所他を巻き込んだ彼らのトラブルシューティングの一幕。軽快なフットワークと熱意で事にあたるという一般的なNGOへの印象そのものであった。

他方組織運営面をみてみると若干不安が残る。インドでは経済発展に伴い中産階級が増えているといわれるが、彼らのNGOなどの市民団体への物心両面での支援は未だ限定的だと聞いた。SLICの理念、社会における活動の意義を理解し、支援することができるのはインド社会の中でも教養と社会性があり、かつ経済的余裕のでてきた中産階級以上と思われるが、SLIC側からもまだ十分アプローチしきれていない。長期的に彼らの活動が社会に根付くためには、中産階級を中心とした個々人への啓蒙活動と、民間企業系の財団などとのパイプ作りが今後一層必要になると考えた。同時に、人はどれだけ満ち足りたら自主的に富や知識を分配しようと考え始めるのかということが問いかけられているように思った。

II SOSVA (Society for Service to Voluntary Agencies, www.sosva.org)
1.団体概要:インド社会のボランタリーセクターが地域、特に恵まれない層に対し、より効果的に貢献できるよう各団体の組織・能力強化を支援するための団体。具体的な活動としては、主婦や学生など社会的関心と時間的余裕のある人々を地域ボランティアとして登録・派遣、医療施設への海外からの医療機器供与事業支援、NGOマネジメント研修、ボランタリー団体の透明性確保に向けた評価制度導入などがある。

2.考えたこと:今までみてきた元官僚が始めるNGO活動は設立者の現役時代の人脈と政治力を活用しつつ関連業務を請け負う、いわば行政の下請け的な活動であるケースが多く、SOSVAの活動についても当初はあまり関心がなかった。しかし、同団体の活動内容をよくみてみると、その創造的な活動に感心した。

団体代表はまずはNGOセクター内の課題を洗い出し、NGO自らができることと、官或いは民間の協力を得て対応できることを整理することから始めている。前者のNGO自らができる組織体制強化やスタッフの能力開発などについては、SOSVA独自で取り組み、さらに部門ごとで若手への権限委譲もすることで自らの組織ガバナンスの改善にも着手している。後者については、現状を踏まえた問題提起を官と民に対して行い、ボランタリーセクターに優しい新制度の導入がなされるように働きかけている。

活動の中でも、彼らが州政府に提案したBridge Loan Fund (BLF)は興味深い。ことの始まりは、公的機関のNGO支援事業承認後、実際に資金の支払いが行われるまでに時間を要した際に、自己資金が限られていて資金振込み時まで持ちこたえられない弱小NGOの資金ギャップの問題が深刻だったことによるとのこと。日本の民間助成金やODAのNGO関連事業は個々のプロジェクトへの支援のみを想定しており、管理費部分でさえもNGO側から再三要望が出されているが未だ大きな制度変更には至っていない。今後日本でNGOセクター全体の足腰を強くするようための方策が、NGOとドナーで検討されるような際にはこのやり方は参考になるのではないかとアイデアをもらった。

もうひとつ興味深かった点は、インド本国と海外のインド人コミュニティのつながりである。同代表は州政府の役人ながらも一時期世銀に勤めた経験をもち、その関係で米国のインド人コミュニティとつながりを持つ。その縁から米国で成功したインド人たちの母国支援の窓口(医療機器供与関連)になったり、彼らを通じて欧米のボランタリーセクターに関する考え方を吸収したりもしている。

バングラデシュでも同じように、一度は海外へ流出した頭脳や資金が、NGO活動という形で本国に還元されているケースに遭遇した。移住や出稼ぎなどの理由で先進国へ赴いた「南」の人々は、そこで成功し「北」の住民となっても、故郷の家族或いは社会とのつながりを切ることがない(或いは切れない)。世界各地で人のダイナミックな移動が日常茶飯事になっている。「A国からB国へ」という国単位の関係図に、国外の当該国のコミュニティ分布図も重ね合わせ、人と資金をつなぎあわせて開発に取り組むことが当たり前になりつつあるのではと、日本の協力のあり方について考えさせられた。

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