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2004年8月22日 (日)

あるアドボカシー担当者との出会い(松尾沢子)

「資金がないのはいいことだ。その分、相手を説得することに集中できるから。」今年6月初めから一ヶ月間、英国の国際協力NGOのネットワークであるBOND(www.bond.org.uk)を訪問した。世界的に有名なOXFAMやActionAidといった大手から活動歴10数年でもようやく組織化できたという小規模団体まで、英国のNGO業界のネットワーク化、能力開発、そして業界全体としてのアドボカシー活動の促進に務める同団体でのひと月は、私にとって英国NGO業界の内実を垣間見る機会となった。多くのNGO関係者の話を聞き、意見交換をした中で、一番印象に残ったのが冒頭の一言である。

この発言を聞いた場所はSouthern Advocacy Groupと称されるBONDメンバーなら誰でも参加できる自主勉強会。同グループの趣旨は、途上国のNGOによるアドボカシー活動を効果的に支援する際の先進国NGOの役割を考えるということ。具体的には年4回程度集まり、南北それぞれでアドボカシー活動をしている団体の交流、途上国でのアドボカシー活動にかかるスキル向上、BOND会員団体のこの分野への参加促進、そしてこの分野での好事例を共有することを目指している。

発言の主はとある中規模会員団体のキャンペーン・アドボカシー担当者。当日の会合のケーススタディのひとつとして、彼女の団体がいかに主にアフリカで学生を中心としたボランティアを草の根運動家として育成し、彼らを通じて当該社会でのエイズや教育問題にかかる議論の活発化を進めているかを紹介した後の一言である。

彼女が属する団体は生活改善に向けた保健衛生関係のサービスデリバリーもするが、近年は英国と途上国の若者の創意工夫と草の根レベルへのアクセスの良さ、更にはその動員力に期待して、開発問題への関心の向上及びボトムアップ方式での具体的な解決策の提案をするというアドボカシー活動が主流となっている。ただ組織としてはBOND会員区分では「C」、つまり年間支出が50万英ポンド(約1億円)以上、200万英ポンド(約4億円)以下という中規模団体となる。ちなみに同区分の最小規模は年間支出10万英ポンド(約2千万円)以下、最大規模は同支出が2000万英ポンド(約40億円)以上となる。英国でも日本と同じで、なかなか団体の管理費までを支援してくれるドナーはいない。また半永久的に支援が続くことが期待できる会費や募金などの財源を十分に確保している団体も限られており、一部大手を除きどの区分の団体も自転車操業で活動している。

そんな中で「資金がないのはいいことだ。その分、相手を説得することに集中できるから。」と言い切る姿勢に感心した。そもそも資金に限らず何らかの支援或いは賛同を潜在的ドナーであるが関心のない人たちから得るためには、相手に興味をもたせ、かつ納得のいくまで説明をしないといけない。団体の理念、活動の目的、手段、経費規模、期待される効果に始まり、誰が敵か味方か、誰がリードするのか、そしてなぜ自分が参加しないといけないのか等など、想定問答集はいくらでもできる。結果的には相手の関心の度合いを測りながら臨機応変に対応していくことになるが、その過程は実は自らの活動をより精査する過程であり、最終的には彼らの活動の正当性を高めてくれるということを彼女は知っている。またこのプロセスは、相手側に活動の意義、また関わった団体のスタッフやボランティアには自分たち個々人ができることを、それぞれ確信させてくれる。この「確信」を得ることができれば、アドボカシー活動の次の目的である行動変容(或いは参加)への道が開けるということを信じてもいるのだとも思った。

今まで出会ったいわゆるアドボカシー担当の中には、アドボカシー活動のなかでも、世間の関心を集め、資金確保のための具体的な方策にのみ力を入れていると見受けられる人もいた。メディア露出度や目標集金額達成に一喜一憂する彼らをみて、アドボカシーってなんだろうと首をひねっていた私に、彼女とSouthern Advocacy Groupの会合はひとつのあり方をみせてくれた。彼女の前職は民間企業の営業担当とのこと。団体の資金や人手不足を営業で培った能力で補いつつ、関わった人々の共感と参加を得ながら途上国の貧困問題に取り組む今の仕事が好きだという。その生き生きとた姿は実に気持ちのよいものだった。

2005年は英国の国際協力関係者にとって重要な年である。スコットランドでのG8サミット開催、年後半のEU持ちまわり議長担当、ボブ・ゲルドフが中核となったLive Aidの20周年、MDG達成度の中間評価会議といった諸々のイベントが同時に起こる年である。また現首相と財務大臣共に「開発」と「アフリカ」が、同国が議長を務める会議での主要課題と明言している。英国社会の開発問題やMDG達成への関心と具体的な参加を促すのに、この好機を逃してはならぬと英国NGO業界は大いに息巻いている。既存の債務救済、エイズ、政策一貫性、環境などの個別キャンペーンも巻き込んだ、“Mobilisation 2005”と呼ばれる一大アドボカシー活動が現在着々と形をなしている。具体的には、2005年一年間を通じて、開発の諸問題を英国民に投げかけ、貧困削減に必要な手段(例えば貿易ルールの変更、債務救済、ODA増額など一連の国際的約束の英国政府による履行など)を、英国そして国際社会のステークホルダーたちに要求することを狙っている。BONDメンバーのNGOに限らず、英国社会の様々な団体(宗教関係、教育や人権団体、労働組合など)も参加することから、メッセージが散漫にならないように共通のスローガン(”Make Poverty History”)や行動案づくりも行われ、徐々に全容が明らかになりつつある。

この夏から来年一杯18ヶ月間の予定で繰り広げられるこのアドボカシー活動を支えているのは、冒頭の弁を述べた彼女のようなアドボカシー担当者である。Mobilisation 2005も潤沢な資金があるわけではなく、参加団体それぞれができる範囲での持ち寄りとなる。スローガンのとおり貧困を過去形にするために、どれだけ関係者が一丸となり、同時に「ただ乗り」を許さないequal burden and result sharingの精神と規律を維持しつつ活動を展開できるかどうかが成功の鍵となりそうだ。このキャンペーンはG8各国を中心に英国内に留まらず世界的に展開される予定であり、本邦NGOのアドボカシー担当者が彼らと共に活動する日は案外近いかもしれない。日本でどのようなアドボカシーが展開されるかもあわせ引き続き注目していきたい。
追記:現在はBONDNに引き続き、NIDOS (スコットランドの国際協力NGOネットワーク、www.nidos.org.uk) 訪問中

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コメント

開発プロジェクトの資源動員などを担当するものとして少し考えさせられるエッセーですね。理論的、或いは理想的には、アドボカシーは資源動員やファンドレージングとは異なるものなのでしょうが、実際のところアドボカシーと資金集めの活動というものはかなり密接なつながりをもっていると思われます。当然、アドボカシーの活動を持続させるためには資金が必要ですし、資金を集めるにはアドボカシーを通した政策メッセージのアピールが必要となります。最近よく見かける各種のグローバル・キャンペ-ンなどは良い例ではないでしょうか。確かに、政策提唱が一つの目的となっておりますが、そのプロセス・手段としては資源動員(資金・人材・政治的圧力)活動をしているように思われます。(私の知るアドボカシーの方が、やたら政府予算に関連した数字に強いのもこのためでしょうか。)一部のソーシャル・マーケティング(コーズマーケティング)の理論などもこのようなグローバル・キャンペ-ンで実践されているような印象を受けます。私個人としても、資源動員とは、究極目的は政策提唱にあって、そのために資金、人材、政治的圧力を駆使することであると考えています。実際、資源動員には、ファンドレージング(自分の組織のための)に加えて、ロビー活動、政策対話などの知識・スキルが必要となるように思われます。

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