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2005年6月13日 (月)

PLA実施(位田和美)

(前回のコラム「ニーズ調査の先走り」)

2005年2月2日。活動村で初めてきちんとした会議を開き、PLAを実施した。活動村へ通い始めて3ヶ月ほど経ったときのことだ。会議開催前は、果たして村人が来てくれるのか、私のつたない現地語で進行できるのか等々、不安だらけであった。

会議当日、約束の時間に村人のよく集まる木の下へ行ってみると、村長以下、何人かが既に待ってくれていた。そこで、もう少し人が集まるのを待つ間、村長たちに村のプロフィールについて質問することにした。村の人口から始まり、基礎インフラ、村内外の組織の存在等々。話を聞いているうちに、過去に村で行われていた女性グループ活動の問題点・課題も垣間見えてきた。

次に村の地図作り。これは後の地図活用を省みると成功したとは言い難いが、地面にしいた大きな紙の上に石や小枝を置いたりして、自分たちの村に何があるのかを皆で声に出してあれやこれや言い合うこと自体が楽しかったようである。後からやってきた村人たちも、「何の騒ぎだ?」と興味深々で地図作成に参加してくれた。

地図完成後、いよいよ村の課題を話し合ってもらおうと、PLAツールのひとつである「問題の木」を実施した。これは、村人が直面している問題をまず挙げてもらい、次にその原因と結果を分析してもらい、最後にアクションプランを立てる、というものである。結局、この村では(1)女性の重労働と(2)健康、(3)ソーシャルセーフティネットの欠如と3つの問題が挙がった。以下、村人たちが考えた因果関係を紹介する。

(1) 女性の重労働

具体的に、女性たちはどんな仕事に従事しているのか。それは村の生活を見れば一目瞭然であり、予想通り、重労働の代表選手、水の運搬や薪での調理、ミル搗きから成る炊事と畑仕事、子守りが女性たちの主な仕事であることが挙がった。

しかし、さらに面白いことに、女性の重労働の要因の根底に一夫多妻制が挙げられ、議論が白熱したことである。女性たち曰く、一夫多妻制によって一家にたくさん女性がおり、子供の数も多い。したがって、家族の数に比例し、炊事や子守りが大変である。また、男女間で「家族」の単位が異なるため(男性たちはすべての妻子を含む大家族を一単位とする一方、女性たちは自分と自分たちの子供を中心とする家族を一単位と認識しているようである)、女性たちは自分の「家族」を守るために、野菜の種や子供の洋服、しいては日常用品を買うにも畑で一生懸命働かざるを得ず、特に第二夫人以降はその傾向が強いと言う。さらに、女性の権利が尊重されていないために、夫の意向に逆らえず、家族計画を立てることもなく、結果として子だくさんとなり、いつまで経っても仕事が減らない、とのことであった。そして、その重労働の結果として、休む暇もなく、日常的に疲労感があり、ときに健康を害することがある、と分析していた。

この議論をしているとき、女性たちはとても生き生きしていた。普段黙々と働いている彼女たちが、「一夫多妻制は妻の労働分担を図り、ひとりあたりの労働を削減するための措制度である」と言い返す男性陣をもろともせず、村の男性たちの前で上記のように堂々と意見を言い、自分たちの思いのたけを存分に述べていた。

(2) 健康

さて次に(1)の女性の重労働の結果としても挙がった「健康」の問題であるが、この村には簡易保健小屋があり、地域保健普及員も精力的に保健啓発活動や乳幼児体重測定を実施している。実際、村全体の保健分野に対する取り組みが評価され、JICAの母子保健プロジェクトのパイロット村としても指定された村である。そのような村の健康の問題とは何か、ここでも女性たちが積極的に発言してくれた。

曰く、健康問題の原因としては疾病予防の知識はあってもその実践が欠如しており、また、栄養不足、重労働、資金不足と合わせて相乗効果を発揮してしまっているとのことであった。ここでも原因分析の際に一夫多妻制のことが持ち上がり、多くの妻を持つ夫が家計を握っているがために各家族(妻単位)に石鹸や蚊帳などが行き渡らず、また、病気の際にも夫が付き添うか、交通費を出すかしなければ病院にも行けず、もしも夫が遠方に出稼ぎに言っている場合、その帰りを待つこともあると言う。

実際、PLA実施以前にも、村に嘔吐が続く赤ちゃんがおり、母親から「夫にこの子を病院に連れて行くように言ってちょうだい。」と懇願されたことがある。当時は何のことがよくわからず、「どうして自分で頼まないのかな。」と思いつつも、赤ちゃんが心配なので言うだけは言ってみた。すると、旦那さんは「じゃ、今日はもう日も暮れるから、翌朝一番に設備の整っている病院へ連れて行くか。」とすぐさま承諾してくれた。その後、病状回復した赤ちゃんの母親から予想以上に感謝された、という経験がある。

上記事例に見られるように、この村ではPLA実施時のような会議等での女性の発言権は比較的あると言えるが、家庭内では必ずしもそうでないということがわかる。ここでも村人の問題分析力に感心すると同時に、問題の奥深さ、問題解決の複雑さに気づかされた。

(3) ソーシャルセーフティネットの欠如

最後に、ソーシャルセーフティネットの欠如の問題であるが、(1)(2)の問題とも相互に関連し、男女ともに衣食住の不足を問題であると捉えていた。しかし、この問題に関しては、議論が展開されるに従い、だんだんと「ショッピングリスト」化し、原因結果分析どころではなくなってきたため、途中で打ち切った。

以上、3つの問題が挙がり、村人たちの手で原因結果分析もした。しかしながら、「では、これからどのような活動をするか」と言ったときに、やはり資金源がネックとなり、結局費用も手間もかからない石鹸作りから始めることとなった。今思えば、マイクロクレジット制度の紹介等もして、もっと村人に選択肢を持ってもらうべきだったと反省しているが、当時は始めての会議をどう収拾しようか考えるのに精一杯であった。このように、数々の自己課題が明らかになった会議ではあったが、会議終了時には満足気でさえあった村の女性たちを見るにつけ、(その後の活動につながるか否かを問わず)PLAを実施し、村の男女が一同に介した場で、女性たちが発言の機会が持てたこと自体とても価値のあることに思えた。今後は、これを自己満足に終わらせないように、いかに活動を展開していくか。試行錯誤は果てしなく続くのであった。

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コメント

本コラム送付時に、杉原さんの方から以下のような貴重な所感をいただきました。
・女性の重労働の要因の根底に、「男性」対「女性」という切り口より むしろ「第一夫人」対「第二夫人以下」、「姑」対「嫁」の関係はどうなっているのでしょうか。
・夫人同士が助け合うのではなく、いがみ合うことが、労働を増やしていると言った人はいなかったでしょうか。また、そのような分析はできないのでしょうか。

以上、大変面白い視点だと思います。
コラム中のPLA実施時には、村人から「第一夫人」と「第二夫人以下」自体の関係について言及はまったくありませんでした。これは、第一夫人と第二夫人以下の関係が良好であるとも取れますし、他方で関係があまりにセンシティブであるがために、会議のような公の場では言及できないとも取れます。実際、いくらイスラム教の教義に「夫人は4人まで。そして、同等に扱うこと。」と定めてあっても、所詮は人間。社会文化的な要素も複雑に絡まり合い、夫人たちをまったく同等に扱うことは難しいものです。

セネガルの村落部では、大半の家で第一夫人と第二夫人以下が同じ敷地内にいます。そして、たまに当番制の家もありますが、家族の中で一番若いお嫁さんが食事を準備します。他の人は、換金作物であるピーナッツの殻割り(これが重労働なのです!)やミル搗き、
水汲みなどをして、労働分担はできているように見受けられます。また、一般的にセネガル人は争いを好まないため、不満に思うことがあってもあまり口には出しません。

ただ、ここでは予想外に離婚経験のある女性を見かけます。
そんな彼女たちは(女性中心の単位の)家族の大黒柱として一生懸命働き、ときに女性グループのリーダーになったりもしています。

内弁慶ならず、外弁慶のセネガル人女性。
ジェンダーの視点からはどのような分析が可能なのでしょうか。。。

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