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2005年8月 1日 (月)

女子教育とは(利根川佳子)

今回で6回目を向かえることになったコラムであるが、インターンのテーマであった女子教育について書き、私のコラムを締めくくりたい。

私個人のこのインターンシップの目的は、教育における男女格差がなく、女子生徒がエンパワーメントできる教育とはどうあるべきかということを、エチオピアでの実際の現場を見ることで考えてみるということであった。

国際開発の中で、女子教育は注目されているテーマのひとつである。2000年の国連ミレニアム宣言では、初等・中等教育におけるジェンダーの格差をなくすことを2005年までに解消し、2015年までには全教育段階における格差を解消することを目標としている。2005年というと、まさに今年なのだが、目標達成は難しいだろう。

このような世界的な流れもあり、ユニセフは女子教育プログラムを世界中で展開している。 1996年から行っているAfrican Girls Education Initiativeという女子教育プログラムも、アフリカだけでなく世界中で展開することになり、Girls Education Initiative に拡大した。

私はユニセフ・エチオピア事務所の女子教育プログラムのインターンであったわけだが、運がよかったのは、当時の教育オフィスのヘッドは女性で、個人的にも女子教育に思い入れがある人だった。彼女の影響もあり、ユニセフ・エチオピア事務所の教育オフィスは女子教育に傾倒していたため、男性職員も女子教育について理解を示していた。だが、これが他の事務所でも同じかどうかはわからない。 実際に、今年の8月から男性の新しいヘッドに代わることになり、女子教育担当者は女子教育への取り組み方の変化を危惧している。

女子教育はなぜ重要なのか。

エチオピアにいる間に自分の仕事について聞かれることが良くあったので
「ユニセフの女子教育プログラムのインターンだ」と答えると、
「何で女の子だけなんだ?男の子だって教育が必要だろ?男は大事じゃないのか?」
と言われることが何度もあった。女子教育を掲げているNGOの職員にさえ、このような質問をされたことがあった。

そのときの私の答えは、
「男の子よりも女の子の方が学校に行ってないでしょ。女の子は社会的に弱い立場であることが多いから、教育を受けて、自分に自信をつけるべきじゃない?」
実際にエチオピアの小学校就学率は男子が75%で女子が43%(2001年)である。

女子教育の利点は多く研究されているが、ここでは4点取り上げたい。

第一は出生率の減少である。多くの発展途上国特にサハラ以南アフリカでは、急激な人口増加は深刻な問題となっているため、出生率の減少は課題の一つである。(ちなみにエチオピアの平均出生率は7人である。)ある研究によると、アフリカにおいて7年以上の教育を受けた女性は教育を受けていない女性よりも産む子供の数が少ないことを証明している。この出生率の減少は、多くの教育を受けた女性が晩婚化することに影響している。また、教育を受けた女性は避妊をし、家族計画を行う傾向があるため出生率の減少につながる (Shults 1993)。

第二に、女性が教育を受けることによって、その子供が健康である傾向が証明されている。教育を受けた女性は、教育を受けていない女性よりも子供の健康に気を使う傾向がある。一点目の出生率の減少ともかかわってくるが、実際に、教育を受けた女性は、教育を受けていない女性よりもその子供の幼児死亡率が低い。

そして第三点目は、教育を受けた女性は、その子供、特に娘に対して教育を受けさせるということである。父親よりも母親への教育の方が、娘の教育に対して好影響があることが研究されている(Shults 1993)。 
このような点から、女子教育は、一人一人の子供、さらには国レベルの問題までも左右する影響力があることになる。

さらに、最後に第四点目として、私がユニセフの教育オフィスのヘッドに言われたことを挙げたい。彼女に言われたことは、「女子教育プログラムは、結局は教育の質全体を上げることになるのだから、男の子も結局は利益を受ける」ということである。例えば、女子教育のプログラムには、女子のことを考えたトイレの整備、また家事を手伝う女子のために、午前や夕方、週末などのフレキシブルな授業スケジュールの設定などが挙げられる。もちろん女子のことを考えて行われるプロジェクトだが、トイレの整備も、フレキシブルな授業時間も男子生徒に対しても一緒に行われている。結局は、女子教育は教育の環境が改善され教育の質全体を上げることになり、男子にとっても女子にとっても好影響を与える学習環境が整うことになる。

女子教育に対しての考え方は人により様々だと思うが、エチオピアでのユニセフのインターンを終えて、私が考える女子教育への考えは固まった。

つまり、女子教育は女子のみが利益を受ける教育ではないのだ。女子教育にフォーカスすることで、出生率減少や子供の健康など女子への教育がもたらす利点を促すと共に、女子教育によって教育の質全体を上げることになり、より快適な環境で女子も男子も教育を受けることができるようになると考えられる。これが女子教育に取り組む意義だと感じる。

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気がついてみれば、インターンを終えてちょうど1年がたつ。私のコラムも書き終わるまでに1年かかってしまった。インターンで感じたことや学んだことを文章にする機会をいただき、本当に勉強になった。改めて杉原ひろみさんに感謝したい。

私は、5月にアメリカの大学院を無事卒業し、エチオピアにまた戻ってきた。現在は日本大使館で、視点は異なるが、エチオピアの教育中心に仕事をしている。私にとって、去年のユニセフのインターンで経験したこと、考えたことは初心として、いつまでも私の胸の中に残り続けるだろう。

Resource:Schultz, T. Paul. 1993. Returns to Women’s Education. In Women’s Education in Developing Countries: Barriers, Benefits, and Policies. Edited by Elizabeth M. King and M. Ann Hill. A World Bank Book.

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コメント

紀谷さん、ご無沙汰しております。メッセージ大変ありがとうございました。ネット環境がよくなく、反応が大変遅くなりまして申し訳ありません。
エチオピアに来てから3ヶ月、田舎をまわる生活を送っています。どこかでお会いして、お話をお聞きできる日を楽しみにしています。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。

利根川さん、楽しい連載ありがとうございました。お互い途上国の大使館で開発のため働くようになりましたね(笑)。真剣に考えを深めておられる様子、大変励みになります。健康に気をつけて、一層ご活躍ください。

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