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2005年9月19日 (月)

エイズ予防活動のその後(位田和美)

(前回のコラム「「できること」から・・・」)
いつしか保健啓発活動が私の活動の中核を占めるようになってきたことは前回のコラムでも記した。今回は、保健啓発活動のひとつとして、昨年から活動展開を試みているエイズ予防活動のその後をご報告したい。
先のコラムで書いた紙芝居のフランス語訳を知人の高校生や大学生の有志と一緒に細々と続ける一方、郡庁やNGOが主催する、小学校の先生や地域保健員を対象としたエイズ予防セミナーにて紙芝居をエイズ予防教材として紹介することとなった。

紙芝居。日本人には馴染みの深い情報伝達ツールだけれど、果たしてセネガル人に受け入れられるのか。ちゃんと最後まで聞いてもらえるのか。また、ジョイセフから寄贈された、この「終わらないさよなら」という題名の紙芝居は、アフリカのとある国に住む小さな女の子が大事な家族をひとり、またひとりと亡くしていく悲しい物語である。(注)物語の中にはHIV/エイズの知識だけでなく、HIV/エイズという病気が持ち得る社会問題(HIV/エイズに対する無知から来る差別)まで取り上げている。このような複雑で悲しいストーリーを、根から明るいセネガル人が好むのか。また、HIV/エイズ感染率が比較的低く、HIV/エイズ患者の存在が身近でないセネガルの村落部において、物語の内容が難しすぎないか。いくつかの不安材料を抱えつつも紹介してみると、以前から「複雑なエイズの知識をいかに子どもたちにわかりやすく伝えるか」、「多様な教材を使っていかにエイズに関する知識の深堀りを図るか」という問題意識を抱いていた小学校の先生のニーズとぴったり合っていることがわかった。また、電気設備の整っていないほとんどの学校では、セネガル人の好きな映画上映もままならず、持ち運びが簡単な点でも紙芝居の評価は高かった。

実際に、エイズ予防教育の要請を受け、紙芝居上演を行った村の小学校では、生徒たちはきれいな挿絵や紙芝居の舞台となった村と自分たちの村との文化的・社会的慣習の近似性がたくさん盛り込まれているストーリー展開に惹き込まれ、約1時間という長丁場ながら夢中で耳を傾けてくれた。

また、別の村の小学校では、毎年開催されている文化祭の出し物として、この紙芝居のストーリーを基にした劇をしようということになり、全学年入り乱れてのベストキャスティングで劇団を結成した。総じて、セネガル人は劇が大好きで、演じるのも非常に上手い。この劇団結成のニュースは、練習開始早々、近隣村にまで口コミで話題となっていった。そして、文化祭当日。練習開始当初は恥ずかしそうに演じていた子も堂々と演じ、また、最初から演技の上手かった子もアドリブに磨きをかけ、最高の出来となった。近隣村から大勢駆けつけた観衆も、全員が食い入るように鑑賞するほど盛況を期した。また、文化祭前夜に、医療機関とNGOの協力を得てエイズ予防啓発の映画上映を実施していたことも、少なからず観衆の劇への関心を高めていたのかもしれない。

正直な話、これらエイズ予防活動を展開している最中も、「都市部ではともかく、村落部でエイズ予防活動がどれほどの重要性を持つのか」「予防法や血液検査の重要性を伝えても、対策を講じる手段は極めて限られているのではないか」「活動内容が村人の理解・関心にマッチしているか」という疑問が解消される日はなかった。

しかし、ラジオでよく耳にする「エイズ」という病気について知りたい、という基本的知識欲求を村人皆が持っていることは事実であり、そのニーズに応えることは村落開発に携わる者として必要なのであろう、と思っている。また今回、紙芝居や映画、劇といった多様なツールを効果的に使い分け、繰り返し知識を伝えることの重要性も充分学ばせてもらった。特に、劇は演劇好き・演劇上手なセネガル人の気質に合っており、演技者が村人自身ということで観衆の関心も高まり、劇後にも話題性の高い、有効な情報伝達ツールであると認識することができた。どんな活動でもそうであるが、その地域の人々が生き生きとする最適な伝達ツールというものが存在する。それを最大限活かすべく策を凝らすのがファシリテータの役割なのであろう。口承文化が発達し、公用語のフランス語も国語による識字もまだ充分普及していない中、「上からの政策」とも言い得るエイズ紙芝居の読み手育成講座の実施をめぐり、医療機関との協議が頓挫している今日、改めてそう思う。
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(注)本紙芝居はエイズがもたらす「悲しさ」をテーマとしているのではなく、アフリカのとある国の現実を忠実に描きつつも、この現実を前に、地域コミュニティは「どうするのか」「どうしようか」という問題提起を主眼としている、ということを書き添えておきたい。

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コメント

エイズの啓発活動、大成功ですね。紙芝居に加えて演劇化、さらには幅広い関心を集めるなど、大変な「美談」だと思います。是非、このような成功体験をばば広く共有して、多くの協力隊員や経済協力関係者を勇気付けてください。ただし、まずはお体をお大事に!

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