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2006年4月

2006年4月24日 (月)

欧米における北朝鮮人道・開発研究(杉原ひろみ)

前回のコラム「ナチオス元USAID長官と北朝鮮

『北朝鮮にかかる文章をドキドキしながら拝見しています。素人から考えると、「情報あるのかしら」と思っていましたが、結構論文など出ているのですね。』

開発援助の実務に携わる友人から感想が送られてきた。また、別の人からは『日本人なら「在日」・「韓国人」を知った上で、それらとの比較で「北」の社会を類推していく近隣国的発想が普通である。』『北米にいて北朝鮮にリンクする際は、プラクマティックな研究態度にならざるを得ないのではないか。』等の意見をいただいた。

そこで今回コラムでは、北朝鮮研究、特に対北朝鮮人道・開発支援研究に関して、欧米(主にアメリカ)の英語圏ではどんな人たちが、どのように研究しているのかまとめてみる。

日本ではブルース・カミングスが一般に知られている。彼の著作には邦訳本が多く、メディアにも取り上げられている()。しかし、層は薄いながら、他にも北朝鮮に関する研究をしているアメリカ人はいる。では、欧米、特にアメリカにおいて、組織として北朝鮮の人道・開発研究をしている機関はあるのか。日本と違ってアメリカは北朝鮮から地理的に遠く、直接的な利害関係もあまりないため、数も少ない。ブッシュ政権の外交・安保政策に大きな影響力を持つとされるシンクタンク「ハドソン研究所」(Hudson Institute)や、政府機関「米国平和研究所」(US Institute of Peace)、また民間シンクタンク「ノーチラス研究所」(Nautilus Institute)などが挙げられるが、組織としてより個人の力に依るところが大きい。また、インターネットの普及に伴い、国境を超え、英語を共通言語にして、情報の蓄積や研究者間のネットワークの形成が進んでいる。

ワシントンDCで調査するかぎり、大きく分けて研究者層は三つに分かれる。一つに地域研究者である。1970年代に韓国の開発援助に携わった人が、現在、北朝鮮の人道・開発支援や研究を行っているケース。現在、アジア財団韓国駐在事務所代表を務めるエドワード・リード(Edward P. Reed)などがそうである。彼は1970年から73年まで米国平和部隊(日本で言う青年海外協力隊)隊員として韓国ソウルに派遣され、大学の英語教師となった。その後、米国ウィスコンシン大学で国際開発学博士号を取得し、開発援助実務と大学研究の双方で活躍している。他に、北朝鮮の人道・開発支援に対して、欧米や韓国など国際NGOがどのように取り組んでいるのか、他の研究者と詳細に調査し、一冊の本にまとめ上げた、マンスフィールド財団事務局長のゴードン・フレイク(Gordon Flake)もいる。

二つに外交や防衛など北東アジアの安全保障や、国連等の実務経験者である。北朝鮮に実務で携わった経験を元に論文を執筆している。例えばケネス・キノネス(Kenneth Quinones)などがそうだ。1992年、彼は朝鮮戦争後、北朝鮮に訪問して金日成と面会した初めてのアメリカ人元外交官である。また、イギリス人のヘーゼル・スミス(Hazel Smith)は国際政治学者であるが、同時にWFPなど国連や、キリスト教系NGO「カリタス香港」のスタッフとして北朝鮮に関わり、論文を数多く執筆している。北朝鮮から中国に逃れてきた難民や人権問題に関する論文を発表している。私の知るかぎり、彼女が最もバランスのとれた学際的な学者である。

三つにキリスト教関係者である。例えばエルス・カルバー(Ells Culver)がそうだ。米国緊急援助型NGO「マーシー・コー」(Marcy Corps)の創設者の一人である。彼は活動家であり、残念ながら執筆した学術論文等は見当たらない。2005年に78歳で死去したが、翌年1月に初のアメリカ人として、北朝鮮より友好メダル(friendship medal)を授与されている。また、カナダ人のエリッヒ・ワインガートナー(Erich Weingartner)は個人コンサルタントだが、1985年、世界教会協議会(World Council of Churches、本部ジュネーブ)からの派遣で初めて北朝鮮を訪問。以来、北朝鮮と韓国の教会代表団との初の接触準備を行うなどし、1997年から99年に初の国際NGO(カナダNGO)代表として平壌に駐在しており、関係論文も発表している。さらに、アメリカ人のカリン・リー(Karin Lee)は、American Friends Service Committee (クエーカー教徒によって設立された平和問題や人権環境を扱う米国NGO)等に属した後、現在はクエーカー教徒のロビー団体Friends Committee on National Legislationで東アジア政策教育プロジェクトを担当している。彼女は2004年の米国人権法制定に至るまでの過程で、NGO側から米国上下院へアドボカシーを効果的に行ったとワシントンDC界隈の実務者の間で評価されている。他方、学術界ではその経験をもとに論文を発表している。

ハドソン研究所:http://www.hudson.org/
米国平和研究所:http://www.usip.org/
ノーチラス研究所: http://www.nautilus.org/

Edward P. Reed
● Edward P. Reed. 2004. “Unlikely Partners: Humanitarian Aid Agencies and North Korea”. Ahn Choong-yong, Nicholas Eberstadt, Lee Young-sun (eds.). A New international Engagement Framework for North Korea? – Contending Perspectives. Washington DC: The Korea Economic Institute of America.
● Edward P. Reed. 2005. “The Role of International Aid Organizations in the Development of North Korea: Experience and Prospects”. Asian Perspective. Vol.29. No.3. pp.51-72.

Gordon Flake
L. Gordon Flake and Scott Snyder (eds.). 2003. Paved with Good Intentions? The NGO Experience in North Korea. London: Praeger.

Kenneth Quinones
ケネス・キノネス、2000、「北朝鮮 米国国務省担当官の交渉秘録」伊豆見元監修、山岡邦彦・山口瑞彦訳、中央公論新社
ケネス・キノネス、2003、「北朝鮮II 核の秘密都市寧辺を往く」伊豆見元監修、山岡邦彦・山口瑞彦訳、中央公論新社

Hazel Smith
●Hazel Smith. 1999. “’Opening up’ by default: North Korea, the humanitarian community and the crisis”. The Pacific Review Vol.12 No.3: Routledge.
●Hazel Smith. 2000. “Bad, Mad, Sad or Rational Actor? Why the ‘Securitization’ Paradigm makes for Poor Policy Analysis of North Korea”. International Affairs Vol.76 Issue 3.
●Hazel Smith. 2002. “Overcoming Humanitarian Dilemmas in the DPRK (North Korea)”. Special Report 90. United States Institute of Peace.

Erich Weingartner
● Erich Weingartner. 2001. “NGO Contributions to DPRK Development: Issues for Canada and the International Community”. North Pacific Papers 7: University of British Columbia.

Karin Lee
●Karin Lee and Adam Miles. 2004. “North Korea on Capitol Hill”. Asian Perspective, Vol. 28. No.4. pp.185-207.

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