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2006年7月

2006年7月24日 (月)

「フューチャー・ポジティブ-開発援助の大転換-」書評

「地球に乾杯!NGO」コラム執筆者が参加した翻訳本「フューチャー・ポジティブ-開発援助の大転換-」が、フジサンケイビジネスアイ(日本工業新聞社)と、朝日新聞で書評されました。

●フジサンケイビジネスアイ(2006年6月19日付)
国際社会の貧困やテロリズムに立ち向かうための、国家・企業・市民が連携した「グローバル・ガバナンス」的アプローチが期待される中で、あるべき国際支援とは何か、これまでに見えてこなかった姿が見えてくる、と評しています。
http://www.business-i.jp/news/book-page/debut/200606190010o.nwc

●朝日新聞(2006年7月23日付)評者:酒井啓子(東京外国語大学教授)
国際援助は、他者への施しという優越感を払拭することによって初めて「他者を適切な形で助けることができる」という原著者の意見に賛同し、個人個人が、自分の立ち位置で何が出来るか考えることが必要だと述べています。
http://book.asahi.com/review/TKY200607250384.html

アマゾンへのリンク:
マイケル・エドワーズ著「フューチャー・ポジティブ 開発援助の大転換

2006年7月 3日 (月)

ビル・ゲイツの国際開発への参入(畑島宏之)

マイクロソフト社の創業者の一人であり、IT産業の立役者、有名人かつ億万長者であるビル・ゲイツ、マイクロソフト社会長が、2009年に同社の経営から引退し、夫婦で「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」の運営に専念すると発表した。

このニュースはよく「マイクロソフトがグーグルのような新興勢力に押されている、世代交代」などとして、あたかもビル・ゲイツが隠居するような印象を与えている。

しかし、国際開発業界に身を置く私は、わくわくした。ビル・ゲイツが私の業界に「転職」してくるのだ。また、このことはこれまでの有名人の途上国開発問題への取り組みと大きく異なり、まさしく新時代を示す重要な出来事だと思う。

ゲイツ財団は、コンピューターの配布などのCSR活動を行っているマイクロソフト社とは異なり、世界の保健医療分野を重点に援助する極めて明確なターゲティングを行っている財団だ。

このニュースに私が注目した点は二つある。

第一は、「ゲイツ財団」の規模で、この額は「援助」のイメージを変えるインパクトがある点だ。

途上国に流れる資金を見ると、現在、ODA(政府開発援助)は実はわずかなものになってしまっている。民間資金(投資や融資)は、ODAの3倍を超え、ODAは資金フローの主流と言えなくなってきている。また、かつてODAで行われていたインフラ投資(交通や発電などの基幹インフラ)は民間主導で行われることが多くなってきた。私がこの間出張で行ったバンコクのスカイトレイン(高架鉄道)は民間資金によるものだ。アフリカを席捲している携帯電話も民間投資によるものだ。

反面、公的援助機関は正直言って「シブイ」状況にある。ODAは税金でまかなわれているため、財政再建下の日本では増額に対して理解を得るのは難しい。さらに、国連の緊縮予算や世銀の予算凍結など、国際機関でも予算増額がなかなか認められない状況が続いている。

その中でこのニュースは、民間財団が、国連や公的援助機関に匹敵する財力を持って参入してきたことになる。また、さらなる資金集めにつながっていくようだ。実際、アメリカの「投資の神様」として有名なウォーレン・バフェット氏は財団に307億ドルを寄付すると発表した。その寄付により、ゲイツ財団全体での年間援助額は少なくとも28億ドルとなる(1)。これはカナダやイタリア、年間ODA額が2004年度第7位のスウェーデンを上回る。また、日本の年間ODAの三分の一弱に相当する。これまでもゲイツ財団は保健医療分野に年間8億ドル援助してきたが、これはWHOの年間予算と引けを取らない。

非ODA援助は日本でも地味ながら見られるようになってきた。私が以前、カナダの評価研修で会ったフィリピンの環境関連省庁の人は「日本の援助を受けて植林事業を行っている」と言っていたが、詳しく聞いてみるとODAではなく、スーパー大手イトーヨーカドーからの資金で行っているとのことだった。民間企業のCSR活動も国際協力活動として重要になってきた。

二つ目に、ビル・ゲイツの参入は、これまであった「セレブ」の国際協力活動への参加と異なることだ。ダイアナ妃やU2のボノ氏、黒柳徹子さんの国際協力活動はメディアの注目を集め、世間の関心や寄付金を集めることに貢献した。しかし、このビル・ゲイツの参入はそれとは異なる。ゲイツ氏自らが企業家としてビジネスを起こし、育てた経験を持っている。また自らが潤沢な資金を持ち、実際に資金を持って活動していくことができるのだ。ゲイツ氏はまだ若い。資金だけでなく経営手腕やアイディアも持って国際開発の分野に登場して新風を巻き起こして欲しい。

援助=公的なODAではなくなり、個人、企業、民間団体、ODAなど多様なアクターが、それぞれの資金、利害と意識で援助活動を行うようになってきた。援助は「公的援助機関」の独占物ではなくなってきた。このビルゲイツの引退のニュースはその時代を象徴する出来事のように思えた。

そして、そのような状況の中、開発ワーカーはどうあるべきか。私たちが訳したマイケル・エドワーズ著「フューチャー・ポジティブ 開発援助の大転換」をぜひお読みください。
(大手書店、アマゾン、BK1などで発売中)

(注1)米国NPOの規制により、毎年最低でも基金の5%に当たる金額を活動に支出しなければいけないとなっているため。(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Gates_Foundation

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