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2007年3月

2007年3月 4日 (日)

五嶋節さんの講演を聞いて-子育てから学び、考える-(杉原ひろみ)

2007年2月15日、寒さが厳しいワシントンDCにて、五嶋節さんの講演会が開催された。五嶋節さんと言えば、ニューヨークに暮らし、五嶋みどりと五嶋龍のふたりの子供たちを世界的に有名なバイオリニストに育て上げた母である。その彼女が、二人の子育てを通して学んできたこと、体験してきたことを話してくださったのだ。

私には3歳の一人娘がいるが、子供にバイオリンの英才教育をさせようと思って、そのノウハウを聴きに行ったわけではない。むしろ、同じアメリカ東海岸の地で、マイノリティの日本人として、どうやって子育てをしてきたか、また、二人の子供がアメリカの教育を受けてきたにも関わらず、正しく美しい正しい日本語を話すのを知り、どうやって子供にそのような日本語を教えたのか、そうしたことに興味があったのだ。

実際の五嶋節さんは、自分の意見を忌憚なく言う、ごく普通の関西のおばちゃんという印象で、親しみを感じた。でも、普通の母親と何かが決定的に違う。それは、一つに、自分で自分の人生を開拓する力強さ、二つに、信念を貫き通していること、三つに体験に裏打ちされた自信、四つに子供たちの勉強に関し、音楽を中心に据えながら、歴史や文化、物理などの別の分野にも広がりを持たせ、音楽との関連づけを誘導できるだけのバイタリティと探究心。その四つに尽きると思った。

自分で自分の人生を開拓する力強さについては、私自身、結婚、出産、子育てを通じて、女性こそ、そうしたたくましさが必要だと痛切に感じている。学生時代、そして組織で働いている時は、進むべき道というものが存在した。しかし、女性の場合、結婚、出産、子育てなどを経るにしたがい、そのような定まった道が存在しなくなる。そんな中でどうやって自身の人生を切り開いていくか。これは同時に、いかに信念を貫き通していくかにもつながる。

五嶋節さんは、子供ととことん向き合い、愛情を惜しみなく注ぎ、自分の持つエネルギーを無限に投下し続けても、失敗の繰り返しなのだと言う。彼女は子育てに全力投球をし、そればかりでなく、自分の信じる道をひたすら突き進んでニューヨークに渡り、信念を貫いて子供を二人とも世界的なバイオリニストに育て上げるという実績を作った。それが大きな自信となり、現在の節さんがいるのだろう。

子供たちをバイオリニストに育て上げるだけでなく、自ら考えるという「本当の」勉強をしっかりやらせていたことにも驚いた。「なぜだろう?」「どうしたらそうなるのだろう?」といった素朴な疑問と好奇心を出発点に、物事の本質を追求し、音楽の世界から歴史や文化、物理、心理など別の世界に広がりと奥行きを持たせる教育は、子供に愛情を注ぎ込むだけではできない。親も子供以上に勉強したに違いない。

では、五嶋節さんの話を聞いて、この私はこれからどうしたらいいのか?帰り道、前々日に降った雪が歩道のあちこちに残り、危うく滑りそうになりながら、うなってしまった。

一に、子育てを通じて、親である私がもっと楽しみながら学んでもいいのではないか。娘がアメリカの幼稚園で読んでもらう絵本や、楽しそうな行事一つを取ってみても、そこにはアメリカのみならず、世界の文化や歴史、政治が凝縮されている。そこをもう少し深く掘り下げ、自分自身の見聞を深めるのも楽しい。そして、娘がもう少し大きくなったら、私なりの解釈を、わかりやすい言葉で説明できるようにしたい。

二に、自分が世界を旅し、イギリスで勉強し、アフリカで仕事をしていた時、学んだことや強烈に感じたこと、そして現在の研究生活の中での学びを、ある意味で普遍化し、子育てに還元していってはどうか。子育ては日々の地味な仕事であり、それを自分の仕事や研究とどう絡めていくか。ワシントンDCでは圧倒的なマイノリティである日本人として娘が育つ中で、私がこれまでしてきた仕事や研究を応用させる時がすぐそこに来ているような気がする。

そして三に、逆に子育てから国際協力分野に、何らかの形で再び還元できる方法を考えてはどうか。五嶋節さんが「音楽道場」というNPOを日本で立ち上げたように、私には私なりの方法で、時期を見てフィードバックできないものか。再びアフリカのフィールドに出向いて働くということは、たしかに刺激的だが、だからと言って今、子育てを疎かにしてまでしたいとは思わない。もっと自分の足元に、自分が輝けるものがあるのではないだろうか。それが何なのか、少しずつ考えていきたい。

とまあ、頭で考えてまとめてみたものの、日々の子育ては体力勝負なのである。マイナス10度近い寒さの中でも外で雪遊びをしたいと、玄関のドアをこじ開けようとする娘を見て思った。

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